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LIVE : Marisa Monte
PLACE : Zepp Nagoya(名古屋・笹島)
DATE : 2007/05/26(SAT) 19:00-



マリーザ・モンチ来日。

言わずと知れたブラジルの歌姫様。しかし今まで何度もCDを聴かせてもらったにも関らず、心の中にマリーザの音楽がはっきりした像を結んで、誘惑を始めるということが、ついに起こりませんでした。歌は上手いし、いい曲もあるのに、なぜ?

参考までに、今回の興行に関ったカンバセーションのHPを見にいったら「ジャンルやレッテルといったものは長続きしないと思うわ。だって、すべての理論を打ち破ることぐらい、私にとってはいつでも簡単なことなのよ」とのお言葉があり、ますます混乱。

例えば、何かしゃべるときに、わざわざ「文法を打ち破るのはいつでも簡単」と言われたら面食らいますが、それと同じことを言われているような・・・どうやら言葉はアテになりませんね。マリーザが内に持っているはずの音楽的感覚は、言葉にはできないようです。ここは実際観に行って楽しんじゃいましょう!

並んで待ってたら、やっぱり集まってきました、全国各地のブラジル音楽好きな人たち。そして圧倒的な人数のブラジル人たちが、すでに夏らしい衣装で、開放的な雰囲気を更に盛り上げてくれます。

サンバタウンが押さえてくれたチケットは、最前列の立席という絶好の位置。舞台中央の目の前で開幕を迎えたら、後ろ180度が歓声、前180度がバンドのサウンドと言う素晴しい音響が襲ってきました。一曲目からオーディエンスの大合唱。これはきっと、名古屋会場でしか体験できないライブでしょう。真っ暗なまま1曲目が終わり、舞台中央のマリーザがライトアップされると、歓声も2倍にヒートアップ!

初めて生で見るマリーザ・モンチは、スレンダーで仕草&笑顔のかわいらしいシンガーでした。お洒落に聞こえ過ぎるCDと違って、やはりライブの歌声には力を感じます。バックも相当いいメンツで、ギター、カヴァコ、バイオリン、チェロ、ファゴット、トランペット等々、好ましくアコースティックな編成なのに、音響のバランスが悪いせいか、殆ど音の聞こえない楽器も。
だから、聞き耳を立てることは止めて、ブラジル人たちと一緒に、テキトーにメロディー歌いつつ、体を揺すって、フィジカルに楽しんで、そのまま気持ちよく終了。

さて、ライブの前と後では何か変わりましたか?いいえ、基本的には何も。ライブでしか得られない魅力は、確かに沢山感じましたけど。ご縁がなかった、ということでしょうか。
東京を離れてしまってから、ここ何年か御無沙汰の"Body & Soul"のスケジュールをなにげに眺めてたら、ちょっと気になるアーティストの名前が目に留まりました。


ジャズ・シンガーのClaudia Acuna、来日するんですね。凄く好き、というわけではないんですが、母国語で歌う南米の歌(チリの出身なのです)がよくて、2ndアルバムを暫く聴いてました。
今の耳ならジャズの方はどう聴こえるだろう、と思ってアルバムを探したけど、CDの山の中からどうしても出てこない・・・誰かに貸しっぱなしだったっけ?

まあ、でも、わざわざ日本に来ていただけるのなら、本物聴けるわけだから、と思い直して、ネット上のライブ情報をざっとチェック。

George Colligan Trio featuring Claudia Acuna
2007/6/14(木) 武蔵野市スウィングホール(東京・武蔵境)
2007/6/15(金) Body & Soul(東京・青山)
2007/6/17(日) ごはんBAR ちろりん村(甲府・湯村)
2007/6/18(月) le club jazz(京都・三条)
2007/6/20(水) JZ Brat(東京・渋谷)
2007/6/22(金) Pit Inn(東京・新宿)

そうですか、他の会場もあるのかも知れませんが、とりあえず知り得たのはほぼ平日のライブばかり。地方者にはちときついですね。1日だけ京都がはさまってるのは・・・やはり「京都」なのがミソなんでしょうか。出演者にとっては。

バンドリーダーのGeorge Colliganについては、全く予備知識なし。ちょいと試聴してみましたが、かなりテクニックがあるし、きれいな音を出す人ですね。「姉御」的なアクーニャの声と合うかどうかは、ちょっと分かりませんが。運があれば、聴きにに行きたいところです。
ポルト市にレム・コールハース(Rem Koolhaas)が設計した「カーザ・ダ・ムジカ」(Casa da Musica)という文化施設がありますが、アヴァンギャルドなフォルムによって有名になった建築デザインばかりでなく、そこで開かれるコンサート等も、なかなか積極的なプログラムが組まれていて、ソフト面でも注目すべき存在であるようです。

個人的に特に興味を引かれたのは、昨年12月、ポルトガルギター奏者のリカルド・ローシャ(Ricardo Rocha)が行った、新譜"Luminismo"に関連したコンサートです(CD自体はまだ発売されていない模様)。そこで披露されたのは、3年前のソロ・アルバム"Voluptuaria"を更に発展させた音楽だったようです。
残念ながら、新譜発売までその音楽的内容を知ることはできないようですので、まずは未聴だった"Voluptuaria"を取り寄せてみました。4年前の発売のため、かなり流通量が落ちていました。

また、"Luminismo"のために、ピアノとポルトガルギターのためのソナタが書き下ろされ、インゲボルク・バルダスティ(Ingeborg Baldaszti)というオーストリアのピアニストが共演しているようですので、この人に関しても最新盤"Sonatas"を入手してみました。


"Voluptuaria"は、ファドの伴奏楽器、あるいは、ポルトガルの民族楽器としてのギターラの認識を大幅に塗り替える内容で、独奏楽器として、他の楽器と比較しても遜色ないレベルの表現が可能であることを示した、相当な異色作です。全体的に、バロック×現代曲という印象を受けるのは、ローシャの音楽的志向がそのまま反映されているからなのでしょう。

大半を占めるローシャのオリジナル曲の他、パレーデス(Carlos Paredes)やカブラル(Pedro Caldeira Cabral)の、あまりメジャーではないが印象的な曲も収められており、この楽器の特質に関する深い理解と、超絶技巧、音楽的ひらめきの全てがなければ到達できない境地は、今のところこの人の独壇場でしょう。よく聴くと、ローシャが旋律を唸っているのが聞こえます。グレン・グールドみたいに。実際、この人の特異さ加減はグールド並かもしれません。

伝統的なギターラの雰囲気を愛する方にはお勧めしませんが、この楽器の響きや奏法など、存分に生かしきった上での発展形ですので、一度耳をリセットできるのなら、相当聴き応えのあるアルバムだと思います。決して聴き易いとは言いませんが。


"Sonatas"は、ポルトガルの作曲家アントニオ・ヴィクトリーノ・ダルメイダ(Antonio Victorino d'Almeida)のピアノ作品集です。ヌメリカ(Numerica)というマイナーレーベルから発売されていますが、ジャケ写真はシンプルで美しく、内容に期待を持たせるようなデザインです。

バルダスティは、細微な音の隅々まで明晰な意思が行き届いているような、非常に精度が高く、輪郭のはっきりした音像を叩き出します。変な喩えかもしれませんが、まるで深い絞りで撮った写真のように、全画面解像度の高い映像を見せられている感じ。まさに裏ジャケの眼差しの強さが、演奏に対する意思そのもの。それでいて、全体的にしなやかさを感じさせるので、私が聴いたことのある狭い範囲では経験のない、不思議な感触です。スローな曲では、こもり気味の音質がプラスに働いて、優美な雰囲気になります。

南ヨーロッパの作曲家らしく、光に満ちているのに哀愁を帯びているというダルメイダの作風には良く合うスタイルなのかもしれません。淀みなく流れる鮮烈な水のように技巧的なパートに移行してゆくバルダスティのピアノが、ローシャのギターラとハーモニーを奏でるとき、一体どのような音世界が現れるのか・・・結果は、やはり、新作を待つしかなさそうです。

CD:
Ricardo Rocha "Voluptuaria"
Vachier & Associados, Lda. / V&A200304
試聴ページ→Musicline.de

CD:
Ingeborg Baldaszti "Sonatas"
Mumerica / NUM 1113
試聴ページ→Portuguese Music Information Center