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2008.05.22
Music / Brasileira - 木とワルツと風と

CD : André Mehmari “...de árvores e valsas”
Year / Lavel : 2008 Estúdio Monteverdi (EM 001)
期待していたアンドレ・メーマリ(Andre Mehmari)の新譜が今月上旬発売されました。アルバム・タイトルの"...de árvores e valsas"とは、直訳すれば、「木とワルツの〜」という意味です。メーマリが、伏せられた部分に入れることがふさわしいと思っているイメージ群は、想像するしかありません。
でも、むしろ「樹」という言葉が、私の中では、メーマリの音楽自体をイメージさせます。ブラジルの地…というよりは、音楽という土壌に深く根を張り、豊かに葉を茂らせる大樹。近寄って見れば、複雑で多様なディティールを持っているけれど、柔らかな香りや風にざわめく音、木漏れ日など、感性全体で心地よく深く感じることもできる。まさに、そんな聴き方をしてしまうのです。
セルジオ・サントス、モニカ・サウマーゾ、ゼー・ミゲル・ヴィズニキ、テコ・カルドーゾ等, 曲にそれぞれのアーティストののカラーが強く出てしまっても不思議でないくらい、オリジナリティーの高いゲストを迎えています。しかし、全てはメーマリの音楽の中に違和感なく織り込まれて、一つの宇宙を作り出しているので、この若いアーティストの音楽的受容力は、想像がつかないスケールを持っているようです。
どちらかというと、他アーティストのコラボレーションもしくはセッション的性格が強いと感じていたここ最近の作品と異なり、今回のアルバムでは、”CANTO”で見せていたように、非常に微妙な音を使いつつ、内省的に音楽を練ってゆく手法に回帰しています。ただ、“CANTO”の時には見られなかった北東部音楽の影響が現れたり、多数のゲストを迎えるなど、メーマリの音楽は格段にその世界を広げています。
ゲストは先ほど名前を挙げた、メーマリと親交のあると思われるブラジルのアーティストですが、他にも、おやっ、と思う名前を見かけました。イタリアのジャズシーンで活躍するクラリネット奏者、ガブリエル・ミラバッシ(Gabriele Mirabassi)です。
私はこの人の名前を、ギンガとの共演盤で知りましたが、他にもセルジオ・アサドとの作品もあり、ブラジルのコアなインスト奏者と交流があるようです。せっかくですので、こちらもちょっと取り上げます。

CD : Gabriele Mirabassi / Guinga "Graffiando Vento"
Year / Lavel : 2004 EGEA (EGEA SCA 107)
ミラバッシとギンガ(Guinga)によるギンガ作品集"Graffiando Vento"は、イタリアのEGEAレーベルから発売されているため、ギンガファンでも聞き逃している人がいるかも知れません。
ミラバッシは、すばらしいテクニックと美しい音色で、ギンガの音楽に鮮やかな解釈を与えていきます。最初のうち、違和感があるのは、諧謔に似たギンガの音楽の不思議な逸脱感を期待していると、それとは相反するような、どこか、大理石の彫刻から与えられる印象のような、硬質なタッチを感じるからでしょう。
かつてギドン・クレーメルがピアソラをカバーしたときにも、ちょっと似通った印象を受けたことを思い出しました。、南米の音楽が持つ、リズムのもつれや音の隙間の多さといったものを魅力的に感じ始めていたあのときは、それが削がれた音楽を聴いて、ミュージアムに飾られた美術作品を連想してしまいました。
音型が純粋に取り出されると、その音楽は当然、演奏者の音楽的背景に大きく依存して、別の訴求力を持ちはじめますが、でも、ギンガもあえてそれを否定しようとはせず、端正な音が長い残響を引く環境の中で、自分の音楽が変容してゆくのを楽しんでいるようにも聴こえます。
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