ブログランキング
  1. 無料アクセス解析
CD


CD : Ruben Alves "Clara Madrugada"
Year, Lavel : 2000, New Discoveries Records (ND2003)
Player : Ruben Alves (Piano)
    Ricardo Rocha (Guitarra portuguesa)

2008年になって、な〜んにも変わってない気がしますが、とりあえず音楽だけでも年明けに相応しいタイトルを。
"Clara Madrugada"は、直訳すれば「透明な夜明け」という意味のようです。もう少し、しっくりくる意訳がありそうな気がしますが、私の語彙からでは取り出せません。

"Ricardo Rocha"でググってたら、たまたまこのアルバムが引っかかってきたので、入手したのが去年の前期。
全体を通して聴いてみたら、なかなか光る部分もあるのに、曲によっては、どうしてこうなるの?という垢抜けない展開もあり、まあ、リカルド・ローシャの参加作品としては、こんなのも面白いかな、というのが最初の印象でした。

でも、何度か流して聴いているうちに、次第にこのアルバムの印象が変わっていったのです。
具体的に何がとは言えないけど、とにかく耳に残るものがあるのです。
特に、いろいろな音楽を聴いて疲れた耳をリセットするときには、欠かせなくなっていきました。

Ruben Alvesというピアニスト(おそらくポルトガル人)については、なにも詳細なことはわかりませんが、リカルド・ローシャとほぼ同世代のアーティストだと思われます。
このアルバムを無理に分類しようとすれば、ジャズあるいはフュージョンということになりますが、オリジナリティが濃く、穏やかで、時に美しい世界が訥々と語られていきます。
傑出した部分がない代わりに、簡単には消えない余韻が残ります。

Ruben Alvesの音楽性は、なんとなく、ブラジルのBenjamin Taubkinを連想させるのですが、ただ、タウブキンの音楽がもっと社交性があるのに比べると、かなり個人的な世界観に篭っているような気がします。
そしてこのアルバムのもうひとつの聴き所は、リカルド・ローシャのインプロビゼーションでしょう。フュージョン的な音楽で自由に演ってるローシャって、私の知る限りではMaria Joaoの"Fabura"以外では聴いたことがなく、なかなか貴重なんです。

思いもかけずファド&ポルトガル音楽に触れる機会の多かった2007年でしたが、さて、今年はどんな音楽との出会いが待っているんでしょうか。

あわただしく、忘年会続きでライブ通いもままならない年末は、最近のストックの中から、お気に入りのCDをピックアップして、ゆっくりと過ごす方がよさそうです。

1枚目は、仕事と子育てに忙殺されて、好きな音楽も聴けずにいた後輩を連れ出して、暫く前に行ったライブで入手したものです。
私がこのユニット(=Atr of Music)に注目したわけは、過去記事にあるように、フランスのジャズ・オーボエ奏者ジャン・リュック・フィロンの作品を気に入って聴き続けていたからなのですが、ふと検索をかけてみたら、日本にもプレイヤーがいることを知り、俄然興味が沸いたというわけです。


CD : Art of Music "Aqui"(kan-gen1)
Lavel : kan-gen 2005
Player : tomoca Oboe & English horn
   鴛淵 禎祐(おぶちていすけ) Guitar & Vocal

tomoca(=広多智香)は、日本では珍しいジャズ系オーボエ奏者ですが、ライブで最初の一音を聴いたとたん、これはやられた、と思いました。トッププレイヤーの吹くオーボエの音は、それはもうふくよかな音色で、それだけで耳が心地よくなってしまうのです。共演したギタリスト、鴛淵禎祐の書く曲は、オーボエのロングトーンを活かした奇数拍子のものが多いような気がして、しかしよく聴くと、様々なリズムと形式を持っていました。聴くほど聴き応えがあり、どんどん好きになってゆく感じ。

そして、フュージョン調の"T-Bird"は、ライブでもCDでも、私にとって白眉の一曲。他の曲とは趣を変え、切れのいいアーティキュレーションと、アドリブ部分では特殊な奏法を交えつつ、なかなかキャッチーな旋律を軽快に吹き飛ばしてゆきます。正直に言うと、ネットで試聴したときには、タイム感だけが私の感覚に馴染まなかったのですが、ライブ以降は気にならなくなりました。私の耳がずれていただけみたいです。(汗

しかし、ライブもCDも、どちらかといえば、じっくりとした鑑賞に堪えるもので、心の大切な部分にある思いとともに味わうと、一層音が胸に沁みてきます。

********************************************

もう一枚は、ブラジルの超絶技巧バンドリン奏者、アミウトン・ヂ・オランダ(Hamilton de Holanda)と、天才的知性派ピアニスト兼作曲家、アンドレ・メーマリ(Andre Mehmari)の共作品です。


CD : Hamilton de Holanda & André Mehmari "Continua Amizade"
Lavel : Deckdisk 2007
Player : Hamilton de Holanda (Bandorin)
    Andre Mehmari (Piano)

リアリストと夢想家の感覚が合わないように、2人の音楽性はちょっと噛み合わないんじゃないか、というのが大方の予想だったと思いますが、聴いてみたら、すみません、こちらの認識が甘うございました、と言うしかないすばらしい音楽がそこにありました。

いずれにせよマニアックな内容になる、という安易な予感も覆して、暖かく穏やかに広がる海のような風景。でも、そこにきらめくのは、今まで見たことのない色彩の輝き。

ジルソン・ペランゼッタとセバスチャン・タパジョスの「リフレクションズ」を聴いて以来、弦とピアノの器楽作品として感覚を新たにしてくれる一枚の再来を待っていたのですが、その思いは、頭抜けた才能を持つ、若い2人のプレイヤーによって果たされたようです。

ただ、まだ私はこの盤を充分に評価できていないという気がするので、ここで言葉をとどめますが、久しぶりに聞くアンドレ・メーマリらしい音使い〜常に、世界の知らない部分から導いてくるような、魔術的な音の響き〜に耳を傾け、ゆっくりとした気分で聴くと、普段忘れていた深い場所へと思いを連れて行ってくれるでしょう。きっと。

2007.07.11 再び、ジャズ
JAZZ | 音楽 | CD


CD : EMIKO × スガダイロー "Phase1"
EMIKOSEGAWA / ECLC0003
試聴サイト : Jazz Today

いつのころからか、ジャズに対して感ずるようになった、漠然とした閉塞感。聴きたいという情熱が、いつの間にか薄れてしまったのは、多分そのせい。
でも、最近になって、固い気分をほぐしてくれる音に出会い、再びジャズへの扉を開けてみたくなりました。クラウディアのライブがそのきっかけ。そして、このCDも。

女性ヴォーカルだからということで、最近の耳辺りのいい音楽を予想したら、大間違い。
相当アマノジャクなピアノをゴリゴリ弾くスガダイロー氏と、キュートな声質で楽器のように歌うEMIKOさんのかけあいは、まるで、ユーモアのセンスが全然違う2人の会話か、それとも異種格闘技戦か・・・と思うくらいの冒険的な組み合わせです。
聴き手にさえ安定した足場を与えない、常に挑発するようなズレ方が、このアルバムの大きな特徴ですが、なぜかその感じが、すごく面白い!

ピアノがずっとずれたコードを弾き続けている"Nice Work If You can get It"なんて、最高に楽しい雰囲気です。最後の2コードだけ帳尻を合わせる茶目っ気。拡散するリバーブで更に"壊れ感"を演出している間奏部の音響。
そんな挑発を受け流し、軽やかに、すましたように、正確にメロディーをキープし続けるヴォーカル。近所の悪童とおねーさん、というコミカルな映像が浮かぶようで、笑っちゃうほどうきうきしてきます。
と思えば、最後の"The Man I Love"では、はっとするほどシリアスに融け合うサウンドが聴けたり。

ところが、日暮里の小さなバーで聴いたEMIKOさんのジャズライブは、CDとはまた全然別世界で、共演者と観客とのハーモニーを大切にするものでした。
ブラジル音楽ユニット「メヲコラソン」のヴォーカリストとして知られるEMIKOさんですが、彼女が元々持っているのは、柔軟なジャズ・スピリットなのだということを納得。
ただ、CDでも、ライブでも、共通しているのは、純粋に音楽好きなんだなぁ、と思わせる雰囲気に満ちていることで、最後にはそれが一番印象に残ります。

シコ・ブアルキ(Chico Buarque)といえば、MPBの重鎮であるにもかかわらず、本人のへなへなしたヴォーカル(失礼)と朴訥とした印象のサウンドのせいで、最初はなかなかとっつきにくいアーティストかもしれません。
しかし、やはりシコは曲がいい!という紛れもない事実を、あらためて認識させてくれるアルバムが、この"Noites de Gala, Samba na Rua"です。あれっ、"Olha Maria"って、シコ・ブアルキも共作者だったんですね!恥ずかしながら、今頃知りました。

そして、とにかく素晴しいのが、モニカ・サウマーゾ(Monica Salmaso)の表現力。シコの曲の魅力を、2倍にも3倍にも増して伝えてくれます。まるで全ての曲が、モニカの独特なクール・ヴォイスを想定して書かれたかのような、あまりに自然な一体感。ヴォーカルの最初の1フレーズを聴いたとたん、残りの全てに全幅の信頼を置けてしまうほどです。

モニカ・サウマーゾは、おそらく、現時点では最高のシコ・ブアルキ作品の理解者ではないでしょうか。あるいは、表現においては、本人以上かもしれません。
バックを固めるパウ・ブラジル(Pau Brasil)の演奏も、凝り過ぎず、しかし凡庸に陥らず、最高の技量を持ってシコの音楽に相応しい背景を描き出しています。

文句のつけようもなく、私にとって最良のアルバムの一つになりそうです。こんな音楽が生で聴けたら、それこそ昇天ものですね。


もう一つ、モニカ・サウマーゾ絡みの作品を。こちらは、フルーティストにしてマルタカ(Martaka)社長のレア・フレイリ(Lea Freire)のオーケストラ作品"Cartas Brasileiras"です。
さすが社長。幅広い人脈を活かして超豪華なメンツを集めて贅沢なサウンドを作り上げています(その代わり、CDも贅沢なお値段・・・)。

しかし私がこのアルバムをチェックしていたのは、唐突に挿入された異色のトラック、モニカ・サウマーゾとレア・フレイリ(なんとピアノ担当)のデュオが収められていたからです。ただ、試聴サイトにこの曲はアップされておらず、ずっと気になっていたので、サンバタウンに入荷した時、真っ先にこの曲からチェック!

おおっ、この微妙な和音は?一瞬、アンドレ・メーマリかと思いました。レアの豊かな音楽的背景が、静かに透けて見えてくるようなプレイです。長めの前奏のあと、モニカ・サウマーゾのハイトーンのヴォカリーズが重なり、瞬時に至福の時が訪れました。もう、それ以上は試聴の必要はありません。

後ほどクレジットをじっくり眺めていたら、今作品中の別の曲でアンドレ・メーマリも起用されていることに気付きましたが、他の沢山の楽器の音にマスキングされて、彼のピアノの音は殆ど聞こえません・・・もったいない、というか、つくづく贅沢なアルバムです。

CD:
Monica Salmaso "Noites de Gala, Samba na Rua"
Biscoito Fino / BF 683
試聴ページ→Biscoito Fino

CD:
Lea Freire "Cartas Brasileiras"
Maritaca / M 1025 - CB 7898909537 245
試聴ページ→Maritaca
ポルト市にレム・コールハース(Rem Koolhaas)が設計した「カーザ・ダ・ムジカ」(Casa da Musica)という文化施設がありますが、アヴァンギャルドなフォルムによって有名になった建築デザインばかりでなく、そこで開かれるコンサート等も、なかなか積極的なプログラムが組まれていて、ソフト面でも注目すべき存在であるようです。

個人的に特に興味を引かれたのは、昨年12月、ポルトガルギター奏者のリカルド・ローシャ(Ricardo Rocha)が行った、新譜"Luminismo"に関連したコンサートです(CD自体はまだ発売されていない模様)。そこで披露されたのは、3年前のソロ・アルバム"Voluptuaria"を更に発展させた音楽だったようです。
残念ながら、新譜発売までその音楽的内容を知ることはできないようですので、まずは未聴だった"Voluptuaria"を取り寄せてみました。4年前の発売のため、かなり流通量が落ちていました。

また、"Luminismo"のために、ピアノとポルトガルギターのためのソナタが書き下ろされ、インゲボルク・バルダスティ(Ingeborg Baldaszti)というオーストリアのピアニストが共演しているようですので、この人に関しても最新盤"Sonatas"を入手してみました。


"Voluptuaria"は、ファドの伴奏楽器、あるいは、ポルトガルの民族楽器としてのギターラの認識を大幅に塗り替える内容で、独奏楽器として、他の楽器と比較しても遜色ないレベルの表現が可能であることを示した、相当な異色作です。全体的に、バロック×現代曲という印象を受けるのは、ローシャの音楽的志向がそのまま反映されているからなのでしょう。

大半を占めるローシャのオリジナル曲の他、パレーデス(Carlos Paredes)やカブラル(Pedro Caldeira Cabral)の、あまりメジャーではないが印象的な曲も収められており、この楽器の特質に関する深い理解と、超絶技巧、音楽的ひらめきの全てがなければ到達できない境地は、今のところこの人の独壇場でしょう。よく聴くと、ローシャが旋律を唸っているのが聞こえます。グレン・グールドみたいに。実際、この人の特異さ加減はグールド並かもしれません。

伝統的なギターラの雰囲気を愛する方にはお勧めしませんが、この楽器の響きや奏法など、存分に生かしきった上での発展形ですので、一度耳をリセットできるのなら、相当聴き応えのあるアルバムだと思います。決して聴き易いとは言いませんが。


"Sonatas"は、ポルトガルの作曲家アントニオ・ヴィクトリーノ・ダルメイダ(Antonio Victorino d'Almeida)のピアノ作品集です。ヌメリカ(Numerica)というマイナーレーベルから発売されていますが、ジャケ写真はシンプルで美しく、内容に期待を持たせるようなデザインです。

バルダスティは、細微な音の隅々まで明晰な意思が行き届いているような、非常に精度が高く、輪郭のはっきりした音像を叩き出します。変な喩えかもしれませんが、まるで深い絞りで撮った写真のように、全画面解像度の高い映像を見せられている感じ。まさに裏ジャケの眼差しの強さが、演奏に対する意思そのもの。それでいて、全体的にしなやかさを感じさせるので、私が聴いたことのある狭い範囲では経験のない、不思議な感触です。スローな曲では、こもり気味の音質がプラスに働いて、優美な雰囲気になります。

南ヨーロッパの作曲家らしく、光に満ちているのに哀愁を帯びているというダルメイダの作風には良く合うスタイルなのかもしれません。淀みなく流れる鮮烈な水のように技巧的なパートに移行してゆくバルダスティのピアノが、ローシャのギターラとハーモニーを奏でるとき、一体どのような音世界が現れるのか・・・結果は、やはり、新作を待つしかなさそうです。

CD:
Ricardo Rocha "Voluptuaria"
Vachier & Associados, Lda. / V&A200304
試聴ページ→Musicline.de

CD:
Ingeborg Baldaszti "Sonatas"
Mumerica / NUM 1113
試聴ページ→Portuguese Music Information Center